コーンベルトとは?
アメリカ合衆国の「コーンベルト(corn belt)」とは、アメリカ中西部に広がる、トウモロコシの主要生産地を指しています。
アメリカ合衆国の中西部とは、以下の地域のことです。

コーンベルトは、以下のような州に広がっています。
ネブラスカ州、カンザス州、ミネソタ州、アイオワ州、ミズーリ州、ウィスコンシン州、イリノイ州、ミシガン州、インディアナ州、オハイオ州、ケンタッキー州の全域または一部が含まれています。
その中でも、アイオワ州、イリノイ州、ネブラスカ州、ミネソタ州が主要な生産地で、これら4つの州でアメリカで生産される約50%を生産しています。つまりこれらの州が世界有数の産地となっているのです。

ひらがな表記では「とうもろこし」、カタカナ表記では「トウモロコシ」です。法令上ではひらがな表記が多いのですが、この記事では読みやすくするために、カタカナ表記で統一します。ちなみに漢字表記では「玉蜀黍」と書きます。
トウモロコシとは?
トウモロコシはイネ科の一年草で、世界中で食されている重要な穀物です。
一年草 … 一年以内に種子から発芽して、開花して、実を結んで、枯れる植物のことです。そして翌年には残った種子から新たな植物が育ち、同じサイクルを繰り返します。
世界三大穀物の一つ
トウモロコシは、米、小麦を合わせて世界三大穀物と呼ばれています。原産地はアメリカ大陸で、探検家コロンブスがキューバ島から持ち帰って、ヨーロッパなどに広まりました。また、日本には1579年(天正七年)にポルトガル人によって、九州にもたらされたのが最初と言われています(諸説あります)。
三大穀物と言われるように、世界的には穀物に分類されていますが、日本では野菜に分類されています。いずれにしても、日本の食卓に欠かせない存在のトウモロコシですが、アフリカや南米では主食としても親しまれています。
トウモロコシはどのように使われているのでしょうか?
人間の食料はもちろんのこと、家畜の飼料、コーンスターチ、異性化糖、油、バイオエタノールの原料など多岐に渡ります。全体の生産量から見ると人間が食料として利用しているのは、全体の約3分の1に過ぎません。
コーンスターチ … トウモロコシから作られたデンプンです。全世界で生産されているデンプンの大部分がコーンスターチです。糖化製品の原料、食品用、ビール以外には、化粧用、工業用などの様々な用途のために使われています。
異性化糖 … トウモロコシやイモなどのデンプン(コーンチターチ)を原料にして作られる液状の甘味料です。砂糖よりも甘味を感じます。清涼飲料水、アイスクリーム、調味料などあらゆる食品に使われています。
バイオエタノール … トウモロコシやサトウキビなどを発酵して製造される燃料のことです。
アメリカでのトウモロコシ栽培
アメリカは「トウモロコシ大国」です。生産量・輸出量においては世界一となっています。ここでいくつかのデータを通して、アメリカの栽培状況を見てみましょう。
2023年の世界の生産量ランキングです。アメリカが圧倒的に世界一です。
| 順位 | 国名 | 生産量(単位:千トン) |
|---|---|---|
| 1 | アメリカ | 389,690 |
| 2 | 中国 | 289,090 |
| 3 | ブラジル | 131,950 |
| 4 | アルゼンチン | 041,410 |
| 5 | インド | 038,090 |
世界の総生産量(約12億4000万トン)のうち、約30%を占めています。
アメリカで生産されるトウモロコシのうち、食用で消費されるのは、全体の10%もありません。アメリカも含めて直接消費される例としては、ポップコーン、スープ、パン、スナック菓子などがあります。また、メキシコなどの「トルティーヤ」の材料としても有名です。その他には油(サラダ油)、異性化糖などがあります。
残りの多くは、乳牛・鶏・豚といった家畜を世話するための飼料に使われています。これらの家畜は、最終的には肉類や様々な製品となって消費者に届くので、間接的に消費されているといえます。
2022年の世界の輸出量ランキングです。こちらもアメリカが世界一です。
| 順位 | 国名 | 輸出量(単位:千トン) |
|---|---|---|
| 1 | アメリカ | 58,600 |
| 2 | ブラジル | 43,339 |
| 3 | アルゼンチン | 35,410 |
| 4 | ウクライナ | 25,180 |
| 5 | ルーマニア | 05,540 |
アメリカは生産量は世界一ですが、輸出量でも世界一です。国内需要も大きいのですが、それを上回る生産量を毎年安定して確保しています。これもコーンベルトが大きく寄与しています。
日本は多くのトウモロコシを海外から輸入に頼っていますが、約80%をアメリカやブラジルから輸入しています。日本の家畜の飼料用としての国内自給率はほぼ0%です。日本はコーンベルトの恩恵を大きく受けているのです。
アメリカの輸出先ランキングです。少し古くなりますが、2014年~2015年のデータです。
| 順位 | 国名 | 輸出量(単位:千トン) |
|---|---|---|
| 1 | 日本 | 12,096 |
| 2 | メキシコ | 11,306 |
| 3 | コロンビア | 04,342 |
| 4 | 韓国 | 03,953 |
| 5 | ペルー | 02,555 |
世界一の輸出量のうち、相当量を日本に向けて輸出していることが分かります。このことから、アメリカのトウモロコシ生産状況は、日本にも大きな影響を与えているのです。
アメリカの生産量が世界の需給バランスに影響を与えているといっても、言い過ぎではありません。アメリカで不作によって生産量が下がって価格が上昇すると、それらは家畜の飼料に跳ね返ってきますので、肉類の価格上昇へと繋がります。
コーンベルトの歴史
もともと、アメリカ先住民(ネイティブアメリカン)は、トウモロコシを重要な農作物としていました。それによってトウモロコシを中心とした農業も行われていました。
17世紀以降、ヨーロッパからの移民が増えると、農業技術の発達とともに、トウモロコシ栽培も拡大します。1850年代からは開拓民によって、プレーリーと呼ばれている草原などが大農地に変えられていきました。これによってコーンベルトの基盤が築かれていきました。
同じころ、鉄道の敷設が進んでいきます。これにより、農産物の輸送が容易になり、トウモロコシの生産と流通もより一層拡大していきました。1862年にホームステッド法により、多くの開拓民の土地取得が促され、開拓と耕作が進むことによって、農地が拡大していきました。
プレーリーとは草原や低灌木が分布している地域です。年間降水量は数百mmで、そこまで雨量がなく、比較的乾燥しています。そのような環境が黒土(チェルノーゼム)と呼ばれる肥沃な土壌を生み出してきました。文字通り黒っぽい色をしている黒土には、栄養分を非常に多く含まれています。
トウモロコシは、しっかりとした日当たりと水はけの良い場所で、温暖な環境を好み、多くの肥料を必要とします。この点、プレーリーや中央平原をはじめとするアメリカの平原は、このような条件を備えています。そのためにトウモロコシなどの多くの農作物の栽培に適しています。
20世紀に入ると、農業の機械化と化学肥料の導入により、効率的な農業が確立しました。これにより飛躍的に収穫量を増やしてきました。例えば、1961年には1億トンにも満たなかったのが、2024年には、4億トン近くまで飛躍的に増えています。

黄色が主にトウモロコシに利用されている土地ですが、これ以外にも多くの産地があります。
地球温暖化などの気候変動によって、コーンベルトも影響を受けつつあります。アメリカのトウモロコシの収穫量は増加していますが、それは、温暖化が進み、かえって成長期が長くなったことが原因であるとの見方があります。
しかし近い将来、世界的な気候変動の進行によってさらなる温暖化が進むと、コーンベルトはトウモロコシの栽培に適さなくなる可能性があると指摘されています。

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