裁判員裁判とは
司法制度改革によって、2009年(平成二十一年)5月21日に始まった裁判です。
これは国民が裁判員として刑事事件の裁判に参加して、裁判官とともに裁判をする制度です。裁判員は非常勤の国家公務員です。
対象となる裁判は?
裁判員裁判は全ての裁判が対象になる訳ではありません。
この裁判は刑事事件の地方裁判所で行われる第一審が対象となります。そのために第二審以降は裁判員は参加できません。
裁判所は、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所の5種類があります。また、裁判は三審制といって、最大で3回まで裁判を受けることができます。1回目の裁判を第一審といいます。
対象となる事件は?
裁判員裁判は刑事事件が対象ですが、具体的にどんな事件が対象となりますか?
殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪、危険運転致死罪、保護責任者遺棄致死罪、覚醒剤取締法違反などの重大な犯罪の疑いで起訴された事件が対象となります。
このように裁判員裁判は、死刑または無期の懲役または禁錮にあたる罪、さらには故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件を扱います。
目的や意義は?
裁判員裁判は、次のようなことを目的としています。
- 裁判に市民感覚を反映させること。
- 裁判が国民にとってより身近なものとなること。
- 公平な裁判を通じて、司法への理解や信頼が深まることが期待されています。
日当や交通費は?
裁判員に選ばれると日当が支払われます。1日あたり10,000円以内になります。裁判所に行ったけど裁判員になれなかった人については1日あたり8,000円以内の日当が支払われます。
裁判所に行くための鉄道・船・飛行機に関する交通費は支給されます。また鉄道・船・飛行機以外の交通機関は、距離1km当たり37円で計算した金額が支払われます。
裁判の流れ
裁判員裁判の流れについて見てみましょう。
裁判員の選任
けっこう複雑な流れなので図を参照しながら解説を見てください。これは各地方裁判所の管轄内に居住する有権者の中でそれぞれ行われます。

- 前年秋ごろに、衆議院議員の選挙権を有する人(満18歳以上の国民)の中から「くじ」で無作為に選ばれます。選ばれた人たちで名簿を作成します。これが翌年の1月1日~12月31日の裁判員候補者となります。この時点ではあくまでも候補者として登録されただけです。全体的に性別や年齢に偏りが出ないように選任されています。
この名簿に登録される人の数は、令和七年で全国で約30万人いるといわれています。これは有権者の約0.25%にあたります。 - 名簿に登録された人に通知されます。この時点で辞退する事由などに該当しているかどうかを確認する調査票も送付されます。この調査票に基づいて、裁判員にならない人を決定します。
- 事件が発生して裁判になると、その度に候補者の中から「くじ」を行って裁判員候補者が選ばれます。
- 「くじ」で選ばれた裁判員候補者には、質問票と選任手続期日のお知らせ(「呼出状」)を送付されます。一つの事件に対して70人程度にお知らせが送られます。質問票の内容次第では辞退が認められることがあります。この場合は裁判所に行く必要はありません。
- 選任手続期日の日に裁判所に行く必要があります。そこで裁判長から候補者に対して、不公平な裁判をするおそれがあるかどうか、辞退希望の有無・理由などについて選任前の最後の質問があります。これらの手続きは非公開で行われます。
- 最終的に事件ごとに裁判員が6人選ばれます。場合によっては補充裁判員も選ばれます。
どのような人が裁判員になれませんか?
さまざまな理由で裁判員になれません。
<欠落事由>
〇禁錮以上の刑に処せられた人
〇心身の故障のために裁判員の職務遂行に著しい支障のある人
〇義務教育を修了していない人
〇国家公務員法の第38条の規定に該当する人
・成年被後見人または被保佐人
・懲役免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過していない者 など
<就職禁止自由>
〇裁判員の職務に就くことができない職業に就いている人
・国会議員、国務大臣、国の行政機関の幹部職員
・裁判官、検察官、弁護士などの司法関係者(過去も含む)
・大学の法律学の教授や准教授
・都道府県知事および市町村長・特別区長
・自衛官
・禁固刑以上の刑に当たる罪で起訴され、その被告事件の終結に至らない人
・逮捕または勾留されている人 など
<事件に関する不適格事由>
〇審理する事件の被告人または被告人本人、その親族、同居人など
〇審理する事件について、証人または鑑定人になった人、被告人の代理人、弁護人など、検察官または司法警察職員として職務を行った人 など
<その他の不適格事由>
〇裁判所が不公平な裁判をするおそれがあると認めた人
どのような人が裁判員を辞退できますか?
以下のような人が辞退できます。
〇70歳以上の人
〇学生
〇妊娠中の人・出産から8週間以内の人・出産のための入退院や出産に立ち会う人
〇重い病気やけがにより裁判所に出頭することが困難な人
〇親族や同居人の通院などの付添・養育・介護を行っている人
〇父母の葬儀やその他の社会生活上の重要な用務などのために他の期日に行うことができない人
〇過去5年以内に裁判員・補充裁判員などを務めた人
〇過去3年以内に選任予定裁判員だった人
〇過去1年以内に裁判員候補者として選任手続きに出頭したことがある人
〇辞退が認められた人以外で裁判員候補者などで裁判所に行ったことのある人 など
また、仕事が忙しいという理由だけでは辞退できません。しかし自分が処理しなければ業務に著しい損害が生じる場合は、上記の辞退事由に該当する可能性があります。その場合でも最終的な辞退の判断は裁判所が行います。
最高裁判所が公表している調査によると、裁判員候補者として選ばれた段階で、約30%の人が辞退、さらに選任手続期日が通知された段階で、さらに約30%の人が辞退を申し出ているとのデータがあります。
自分が裁判員候補者や裁判員になった場合、家族や仕事先などの身近な人に自分が選ばれたことを話してもよいですが、インターネット(SNS・ブログ・ホームページ含む)上などで公表してはいけません。不特定多数の人が知ることのないようにします。
また、裁判員として活動中に公表してはいけません。しかし裁判員として任務を終えた後に公表することは、本人の同意があれば可能です。
公判前整理手続
最初の公判が行われる前に、裁判官・検察官・弁護人が集まって話し合い、公判での争点を明確にしたり、証拠を絞り込んだりして、どのようなスケジュールで進めるかなどの審理計画を立てます。この手続きによって裁判をスムーズに進めることができます。平均数か月間に2~3回行われます。この手続きには裁判員は参加しません。
読み方は「こうはんぜんせいりてつづき」ですが、「こうはんまえせいりてつづき」と読むこともあります。
事前に裁判員が膨大な証拠を読み込んで理解してもらうことは負担が大きいのです。それで公判前整理手続を行うことによって、裁判員は法廷での審理に参加するだけで争点を判断することができるようになります。
公判
法廷に立ち会って、検察官と弁護人が法廷でそれぞれの考えを聞きます。裁判員は裁判官とともに、検察官と弁護人双方の主張を聞いたり、証拠として提出された書類等を見聞きしたり、証人や被告人の話を聞いたりします。また場合によっては裁判員自ら証人等に質問することができます。
服装には特に決まりはありません。普段の服装で大丈夫です。また法廷内では、外部と電話やメールなどをすることはできません。貴重品として持ち込む場合は電源を切ることになります。
法廷での座席位置のイメージです。

評議・評決
裁判員と裁判官が評議室で評議して評決します。
公判での審理で見聞きした内容を基づいて、被告人が有罪か無罪か、さらに有罪であるならばどんな刑にするべきかを裁判官とともに議論して(評議)、決定します(評決)。
評議をした上で意見が分かれる場合は多数決で決定します。その場合でも多数側の意見に裁判官が最低一人は含まれていなければなりません。そうは言っても、裁判員の意見も裁判官の意見も同じ重みがあるといえます。

判決
裁判員と裁判官は法廷に戻ります。それから裁判長が被告人に判決を言い渡します。裁判員は判決の宣告に立ち会います。これによって裁判員の役割が終了します。
公判前整理手続によって裁判がスムーズに運ぶようになっているので、できるだけ連日で開廷されるようになっています。それで、約70%の裁判が3日以内で終わります。残りの約20%は4~5日、約10%は6日以上かかります。
裁判後
裁判員を務めたことについての感想や経験を話すことができます。また法廷でのやり取りは公開されているので、その内容については話すことは可能です。
ただし感想についても何でも話してよい訳ではなくて、判決内容について「自分は納得できなかった」や「刑が軽過ぎる」などの妥当性について触れてはいけません。
しかし評議や職務上知ることができた秘密について話してはいけません。そのことは判決後生涯渡って続きます。違反すれば6月以下の懲役や50万円以下の罰金となる可能性があります。
評議などで裁判員や裁判官がどのような意見を述べたのか・評決での多数決の内容・事件関係者の個人情報・他の裁判員の氏名 など
課題
この制度が始まって、様々な課題が浮き彫りになってきました。
裁判員の時間的な負担
・裁判に参加するために仕事を抜けるのに、職場などの理解が足りないこと。
裁判員の心理的な負担
・現場の写真などを見てストレスを感じること。
・守秘義務について、秘密を抱えるということへの負担があること。
・法律知識が乏しいのにも関わらず、重大事件の有罪か無罪を判断しなければいけないこと。
制度そのものの課題
・高齢化などによって、年々辞退する割合が大きくなっています。
・第一審しか参加できないこと。

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