社会権ができるまで
社会権は最初からあった人権ではありません。人々が自由権を獲得した結果出てきた新たな権利なのです。そしてその権利は、現代の私たちにとっても大切な権利となっています。
自由権の獲得へ
中世以降の厳しい身分制度の中で、国家による干渉を受けることなく、一人一人が自由に生きる権利を求めるようになりました。そうした中、18世紀以降、欧米を中心に自由権を獲得していきます。
例えば、国王の圧政に苦しんでいたフランスでは革命が起き、後に人々は王政から解放されます。このとき「フランス人権宣言(1789年)」によって、自由権が保障されました。
このような経緯で獲得されたことから、自由権は「国家からの自由」と呼ばれています。
自由権だけでは限界があった
19世紀に入ると、自由権の考え方の浸透とともに、それまで束縛されていた庶民に自由な経済活動が拡大していきました。そのような中には事業に大成功した人も出てきます。その結果、富んだ人と貧しい人との差が激しくなっていきました。
事業を拡大するために、雇用主は厳しい条件で働かせて、より多くの利益を得ようとしました。それによって労働者は、低賃金・長時間の労働を強いられたのです。このような犠牲の下で、資本主義経済が発展していったのです。
なぜ、このような状態なってしまったのでしょうか? それは、労働者側にこれらの悪条件を解決するための権利がなかったからです。
そこで、労働者のような弱い立場の人々も含めて、生活水準を向上させるための権利つまり社会権が求められるようになりました。

社会権とは
社会権とは何でしょうか?
社会権とは、人間らしい豊かに生きるための権利です。「人間らしく生きる」と聞くとごく当たり前のように感じるかもしれません。しかし社会権が広まる前は、人々は人間らしい生活とはいえないような劣悪な条件の下で、不満も言えずに必死に働いていたのです。
このように、いくら国家からの自由があったとしても、人間らしい生活を送れなかったら幸福とはいえません。そこで各国は社会権を保障するようになっていきました。
日本国憲法の中では、社会権の基本となる生存権は次のように保障されています。
すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する
日本国憲法第二十五条第1項
条文にある「健康で文化的な」という部分が「人間らしい」に当たる部分といえます。
どのようにして人間らしく生活できるのでしょうか?
人間らしく生活するためには、国家が介入して必要な制度を整えることが必要です。個人の努力では限界があるからです。そのために、社会権は「国家による自由」とも呼ばれています。
社会権はどのようなことを保障している?
社会権は、ワイマール憲法(ドイツ・1919年)によって世界で初めて保障されました。社会権は20世紀になって確立した比較的新しい権利なのです。
日本国憲法では、具体的に社会権には何が含まれているでしょうか? 社会権を形作っている4つの権利について考えましょう。

生存権(憲法第25条①)
生存権は、社会権の中でも基本となる権利です。この権利は上記であげた憲法第25条①の「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」で保障されています。
この権利は、病気・失業などによって生活が苦しくなった社会的に弱い立場の人々に対しては、生活保護法が設けられていて、この法律に基づいた制度によって、健康で文化的な最低限度の生活が送れるように助けを得ることができます。
教育を受ける権利(憲法第26条①)
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、 ひとしく教育を受ける権利を有する。
日本国憲法第二十六条第1項
教育を受けることによって、将来子どもたちが、社会の中で生きていくのに必要な知識を得たり人間関係を築いたりすることができます。そうすることによって生涯にわたり、健康で文化的な生活を送ることができます。
そのため、全ての子どもが平等に教育を受けられるように、無償の義務教育(小学校6年間・中学校3年間)があります。これらのことは教育基本法によって定められています。これによって、全国民に教育の機会が開かれているのです。
勤労の権利(憲法第27条①)・労働基本権(憲法第28条)
すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
日本国憲法第二十七条第1項
健康で文化的な生活を送るためには、人々が自発的に仕事をして収入を得て生活していくことが必要です。そこで憲法では、勤労の権利を保障しています。
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
日本国憲法第二十八条
さらに、労働者は雇用主に対して弱い立場になりがちです。雇用主に対して不満がある場合、それを解決する方法が必要です。そこで労働者の権利として労働基本権も保障しています。具体的には以下の3つの権利があります。これらの権利は労働三権ともいいます。
労働三権の例外について … 警察・自衛隊・消防・公務員などについては、三権の全てまたは一部が適用されません。
- 団結権 … 労働者が労働組合を作る権利
- 団結交渉権 … 労働組合が労働条件を改善するために雇い主と解決のために話し合う権利
- 団体行動権 … ストライキなどを行う権利
労働三権は、全て「団」で始まる権利です。まず労働組合を作って(団結権)、問題について話し合って(団体交渉権)、それでも解決しない場合はストライキなどによって行動する(団体行動権)ことがあります。
ストライキとは … 労働条件の改善を要求の取り消しするために、働くことを拒否すること。略して「スト」ともいいます。現在日本ではストライキはあまり行われなくなっています。


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