概要
永久凍土とは、「少なくとも2年以上連続して、地中の温度が0℃以下で凍結した状態が継続している地盤(土壌や岩石)」のことを指します。
英語では「permafrost」といいます。これは「permanently frozen ground(永久に凍った土壌)」との省略語で、1945年にS.W.ミュラーによって使われ始めました。これを日本語に訳したのが「永久凍土」なのです。
どのようにして形成されたのか?
地球は、約250万年前から氷河期に入っていて、気候が寒冷な氷期と比較的温暖な間氷期を数万年単位で繰り返してきました。現在は完新世と呼ばれている間氷期にあたりますが、一番最近の氷期(最終氷期)は約2万年前になります。そのために現在の環境下で永久凍土である地域は、少なくとも2万年以上前から永久凍土であったと考えられます。
このように、現存する永久凍土は数万年から数十万年にわたる長い氷期と間氷期のサイクルの中で、長い時間をかけてつくられたのです。
氷河期 … 地球上のどこかに氷床や氷河が存在する時代全体のことです。氷期と間氷期に分けることができます。
氷 期 … 地球上の気候が寒冷化し、大陸氷床や山岳氷河が大きく拡大した時期のことです。
間氷期 … 氷期と氷期の間に挟まれた、比較的温暖で氷床が後退する時期のことです。現在は間氷期にあたります。
どこにあるか?
諸説ありますが、永久凍土は北半球の陸地の約25%という広範囲を占めています。主に北極圏である東シベリア、アラスカ、カナダの極地などの高緯度地域や高山地帯などに広く分布しています。
高緯度地域 … 赤道(緯度0度)から離れた緯度の高い地域のことです。北緯および南緯60度~90度付近の北極や南極を中心とする地域が当てはまります。一方、赤道付近のことを低緯度地域といいます。
日本には永久凍土はありますか?
実は日本でも永久凍土が確認されています。これまでに、標高の高い大雪山(北海道)や富士山に永久凍土が存在することが観測されています。その他の地域にも存在の可能性があります。日本は永久凍土が北半球で分布する南限にあります。
南半球には永久凍土はありますか?
南半球は陸地の面積が少ないので、北半球に比べると規模はかなり小さいといえます。アンデス山脈の山頂付近や南極大陸の沿岸部に散らばっているくらいで、北半球ほど広範囲に分布していません。
土の中はどうなっているか?
永久凍土は、土、岩、水(氷・不凍水)、有機炭素といったさまざまな物質からなる混合物です。
永久凍土層の厚さは、数メートルから数百メートルと場所によって幅があります。地下深い層では年間を通じて0℃以下になりますが、地表は夏には0℃を上回るために、表層部分に関しては融解します。このように夏に融解する層を「活動層」と呼びます。この層では水分が保たれやすいために、非常に軟弱な地盤で、地盤沈下を引き起こしやすくなります。
活動層の下に「永久凍土層」があります。冬期に土が収縮されて裂け目ができると、暖かい時期には地面の裂け目に融けた水が入り、冬期になるとその水が凍って「氷楔」が成長しますが、このサイクルを長年繰り返すことによって、「エドマ層」が形成されました。エドマ層には土や岩ではなく多量の氷が含まれています。
氷楔 … 「アイスウェッジ」ともいいます。永久凍土中の地面にできた割れ目に水が入り込み、凍結してできる楔(くさび)状の氷のことです。凍結と融解を繰り返すことによって成長します。

永久凍土は、次のような3つの地域に分けることができます。
連続永久凍土帯 …… 水平方向でも垂直方向でもあらゆる場所に永久凍土が分布
不連続永久凍土帯 …… 一部の凍土になる条件が整っていない所を除いて永久凍土が分布
孤立的・点在的永久凍土帯 …… 限られた場所だけに永久凍土が分布
永久凍土に何かを建てることはできますか?
はい、可能です。ロシア北東部の大部分は永久凍土ですが、その上に街が造られています。例えば、ロシア連邦サハ共和国の首都ヤクーツクは35万人以上の人々が住んでいる中規模な都市ですが、永久凍土の上に都市が成立しています。
当然ながら、街には多くの建物が建っていますが、永久凍土の深い層までコンクリートの頑丈な杭が打たれていて、さらに建造物は高床式(床が地面から少し浮いている)になっています。その理由として地面に直接建ててしまうと、建物から発生する熱によって凍土が溶けて、傾いてしまう恐れがあるからです。
地表はどうなっているか?
シベリアなどの永久凍土には「タイガ」という広大な針葉樹林が茂っています。永久凍土は夏に表層部分が融けますが、これらが水源となって木に潤沢な水分を供給します。つまり永久凍土のおかげで極寒の大地に大森林帯が形成されているといえるのです。一方で、タイガが断念材のような役目を果たしているために凍土が長年にわたって保たれています。タイガと永久凍土は相互関係にあるといえます。
極地付近には「ツンドラ」と呼ばれる土壌が広く分布しています。夏の融解する時期は湿地帯のようになるので、コケ類や丈の低い植物などが繁茂します。また寒冷ゆえに有機物の分解は進みにくいので、泥炭が蓄積されます。
泥炭 … 泥状の炭で石炭の一種です。低温で枯れた植物が完全に分解されないでできた土のことです。見た目は泥に見えますが、可燃性があって、乾燥させれば燃料として使用できます。
永久凍土の融解が引き起こすこと
気候変動などによって融解する可能性があります。年間の平均気温がー5℃以下であるなら永久凍土が溶けることはないのですが、近年は極地付近でも平均気温が上昇を続けていて、凍土の融解が進んでいるといわれています。これらの気象変化によって、活動層の厚みが年々厚くなっています。
今のまま温暖化が地球規模で進むと、今世紀末には永久凍土は、現在の半分になってしまうという研究結果もあります。永久凍土といいますが、決して不変ではないのです。
大気への影響
永久凍土中には、植物をはじめとした生物の死骸が有機物の形で閉じ込められています。融解が進むと、凍った土に蓄積されていた有機物が分解され、二酸化炭素やメタンが大気に放出されます。
また、永久凍土は大量のメタンハイドレートが生成されやすい環境にあります。しかし融解すると、閉じ込められていたメタンハイドレートが大気中に放出されます。
メタンハイドレート … 水分子(H2O)にメタン分子(CH4)が取り込まれている氷状の固体です。地下深くの高圧力と低温度という条件によって、メタンと水が結びついて白い結晶を作ります。
これらが放出されることによって大気中の温室効果ガスの濃度が増加し、さらに地球温暖化が促進されて、気候変動が加速してしまう可能性があります。
地盤への影響
永久凍土が融解することによって地盤が軟弱になり、融けた水が夏に蒸発したり流れていってしまったりすることによって、地下から氷が失われた分だけ地盤沈下(陥没)するという「サーモカルスト」と呼ばれる現象が起こっています。この現象が起こると、ポリゴンと呼ばれる多角形からなるさまざまな形状の地形が生み出され、大地が凸凹になってしまいます。場所によっては水が溜まって、サーモカルスト湖を形成する場合もあります。
このことはヤクークツのような都市部にも深刻な影響を与えています。融解が進むと、建物を支えている杭が不安定になります。これによって、壁にひびが入ったり建物が傾いたりしてしまいます。建物のみならず、道路やインフラ設備にも影響が出ています。数十年後、多くの建物には人が住めなくなるのではないかといわれています。
ウイルスの危険
さらに、永久凍土の中には未知のものを含むウイルスが多く潜んでいます。2015年には3万年前のシベリアの永久凍土から、「モリウイルス」という未知のウイルスが発見されました。ちなみにモリウイルスをアメーバーに感染させると12時間で1000倍に増殖し、アメーバーが死滅しました。
モリウイルスを含めた未知のウイルスは、その多くが現代でも生存可能なことが、研究で確認されています。今後も永久凍土から古代のウイルスが蘇る可能性もあります。モリウイルスの研究者は「永久凍土はまさにパンドラの箱である」と表現したのももっともなことです。


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