植物も水を必要としている
植物も私たちと同じように生きていくために、水分を必要としています。根や茎から水分を吸い上げて、全体へ届けます。このように水分を吸い上げることを吸水といいます。
根を拡大して見てみると、茎の表面には綿毛のようなものが見られます。これは根毛(こんもう)といいます。根毛があることによって複雑な形状となり、表面積が大きくなります。それによって効率的に水分を吸い上げることができます。
水はどこを通っていくか
根などから吸い上げた水はどこを通っていくでしょうか?
根から茎を通って上へ行きます。ここで単子葉類と双子葉類の茎の断面図を確認して、水が茎の中をどのように通っているか見てみましょう。
単子葉類は、子どものときの葉(子葉)が一枚で、双子葉類は、子どものときの葉が二枚の植物です。芽が出たときから、葉・茎・根の形が異なります。


このように、単子葉類と双子葉類では、茎の断面が全く異なることが分かります。
共通点は、茎の中心から見て内側が道管(どうかん)、外側が師管(しかん)です。道管と師管をまとめて維管束といいます。
異なっている点は、単子葉類は、維管束が全体に散らばっていて、双子葉類は、形成層と呼ばれる壁を中心にして、輪の形に並んでいることです。この内、道管を水が通っていきます。
水は道管を通るので、「水道管」と覚えましょう。
- 道管 … 根から吸収した水や水にとけた肥料などが通る
- 師管 … 葉緑体で光合成によってつくられたデンプンなどが通る
デンプンは水に溶けないので、水に溶けやすい物質と変化してから、全体で届けられる。そうすることによって植物は栄養分を行き渡らせることができる。このように、私たちでいう食事をしているのです。
なぜ道管は内側にあるのでしょうか?
道管は茎の内側、師管は茎の外側にあります。道管は水、師管は栄養分が通っています。水も栄養分もどちらも重要ですが、生命を維持するためには、水の方がより重要なので、安全な内側にあります。茎が傷つけられたとしても、道管を守れる可能性が高くなります。
取り入れた水をどうやって外に出すか
根から吸い上げた余分な水は、最終的に気孔(きこう)から水蒸気として外に放出します。これを蒸散といいます。この現象は、ヒトが汗をかくことによって、体から水分を出すことと似ています。
気孔は植物の表面にあります。その中でも葉に多くありますが、葉の中でも葉の裏側の方に多くあります。気孔の数は、葉の裏側 > 葉の表側 > 茎 の順番になります。
気孔を拡大したイラストを見てみましょう。気孔は、ヒトの唇のように見える孔辺細胞(こうへんさいぼう)という細胞に囲まれています。このすきまから、水蒸気は外に放出されます。

気孔は光が当たると開いて、蒸散が行われます。蒸散が行われて水分が植物から出ていくと、それに伴って根などから吸水が行われます。このように、蒸散と吸水は同時に行われます。
光が当たると気孔が開く → 蒸散量が増える → 吸水量が増える
植物細胞の詳細については、以下の記事をご覧ください。

蒸散量の問題を解いてみよう
下のイラストを見ながら、蒸散量に関する問題を一緒に考えてみましょう。

実験:同じ植物の枝を水の入った試験管に入れました。Aはワセリンを塗っていないもの、Bは葉の表だけにワセリンを塗ったもの、Cは葉の裏だけにワセリンを塗ったもの、Dは葉がない茎だけのものを入れました。試験管内の水には油をたらして膜をつくりました。光に一定時間当てて水がどれだけ減るか調べました。その結果は以下の表のようになりました。問題(1)~(5)を答えましょう。
A | B | C | D | |
光を当てる前の水の質量 | 15.0g | 15.0g | 15.0g | 15.0g |
光を当てた後の水の質量 | 10.0g | 11.2g | 13.5g | 14.7g |
光を一定時間当てることによって、気孔が開き蒸散が行われました。
ワセリンとは、石油からつくられたもので、肌の乾燥を守ってくれたり、外界からの刺激を保護したりします。このように、肌に関連した薬や化粧品に用いられています。その効果から、葉にワセリンを塗ると気孔が塞がれて、その面では蒸散ができなくなります。
注意したいのは、蒸散は葉からだけでなく茎からも蒸散します。茎にも気孔はあるからです。それで計算するときは、茎からの蒸散量も含めて計算しないといけません。
問題(1)試験管の水に油を入れた理由は何ですか?
油と水は相性が悪いので、水に溶けないで膜をつくってしまいます。それを利用して自然な水の蒸散を防いで、正しく実験ができるようにします。
答え:水面から水が蒸発するのを防ぐため
問題(2)葉の表から蒸散する量は何gですか?
問題を考えるにあたって、どこからどれだけ蒸散しているのか混乱してしまうので、蒸散量を下の表にまとめてみました。
蒸散量は実験前の水の質量から実験後の水の質量の差で求めます。
A | B | C | D | |
葉の表側 | ○ | × | ○ | × |
葉の裏側 | ○ | ○ | × | × |
茎 | ○ | ○ | ○ | ○ |
蒸散量[g] | 5.0 | 3.8 | 1.5 | 0.3 |
このようにまとめると、頭の中が整理できます。葉の表側だけの蒸散量が見えてきます。例えば、CからDを引き算すると、蒸散量の差から葉の表側からの蒸散量を求めることができます。よって 1.5 – 0.3 = 1.2
答え:1.2g
問題(3)葉の裏から蒸散する量は何gですか?
同じように表から考えてみましょう。例えば、CからDを引き算すると、蒸散量の差から葉の裏側からの蒸散量を求めることができます。よって 3.8 – 0.3 = 3.5
答え:3.5g
問題(4)茎から蒸散する量は何gですか?
これも表を見てみましょう。これは簡単です。Dの蒸散量がそのまま茎の蒸散量になります。よって0.3gになります。
答え:0.3g
問題(5)気孔が多いのは葉の表側・葉の裏側・茎のどれですか?
答え:葉の裏側
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