日本周辺の海流
海流とは、海の中の一定方向に流れる流れのことです。地球全体でそのような大きな流れがあります。海流は、海の中にある大きな川のような流れのようなものとイメージすることができます。そうはいっても海流の幅は100km以上の広範囲になります。
私たちにとって海流は身近なものです。それは日本列島は、四方が海に囲まれているからです。日本列島の周辺に流れている大きな海流は、4つにあります。その4つとは、日本海流・千島海流・対馬海流・リマン海流です。南から流れて来る日本海流と対馬海流が暖流、北から流れて来る千島海流とリマン海流が寒流になります。
その内、日本海流は「黒潮」、千島海流は「親潮」とも呼びます。この記事では黒潮・親潮という名称の由来に注目しますので、黒潮・親潮に統一して解説します。
下の地図から、4つの海流がどのように流れているのか確認しましょう。

太平洋側では北から親潮、南から黒潮、日本海側では北からリマン海流、南から対馬海流が流れていることが分かります。
なぜ「親潮」というのか?
この海流はベーリング海を由来にして、千島列島・北海道沿いを通って、日本列島の三陸沖まで流れて来ます。
水温は夏でも7~8℃くらいしかなく、後述する黒潮よりもかなり低いです。
なぜ親潮という名称がついているのでしょうか?
親潮には「魚を育てる親となる潮」という意味があります。この意味からも、魚にとても良い環境だということが分かります。この海流は、栄養が豊富で、プランクトンが繁殖しやすい所なのです。そのため、それを餌にする魚が育ちやすくなります。プランクトンが豊富なため、色は緑系や茶系の色になります。
- 寒流は栄養が豊富で、暖流は栄養が乏しくなります。
- 冷たい海は、水深によって水温差があまりないので、海水が上下で移動しやすくなります。その結果、深い所にある栄養分が浅い所(魚が泳ぐ深さ)まで上がりやすくなります。そのため、それを餌にして植物プランクトン、植物プランクトンを餌にする動物プランクトン、そして最終的に動物プランクトンを餌にする魚が繫殖するのです。
- 一方で暖かい海は、水深によって水温差が大きいので、海水が上下で移動しにくくなります。その結果、深い所にある栄養分が浅い所まで上がりにくくなります。そのため、植物プランクトンが繫殖するのが難しくなります。
なぜ「黒潮」というのか?
この海流は赤道由来で東シナ海を経由して、日本列島の太平洋側を房総半島沖まで流れて来ます。この海流は、地球規模で見てみると、太平洋を回っている海流の一部になっています。
水温は東シナ海のあたりで夏は30℃近く、冬でも20℃以上あって、親潮よりもかなり高いです。
なぜ黒潮という名称がついているのでしょうか?
黒潮は全体的に黒っぽく見えることから、そのように呼ばれています。つまり見た目から名称が付けられているのです。
では、なぜ黒っぽく見えるのでしょうか? それは、プランクトンなどが少なくて透明度が高いからです。太陽からの光は反射すると白く見えますが、反射するものがないと、そのまま光は吸い込まれていきます。その結果、海の透明度が高いと黒く見えるのです。
例えば、夏に白い服を着ると熱を持ちにくいので暑くなりにくいですが、黒い服を着ると熱を持ちやすいので暑くなりやすくなります。それは白が太陽熱を反射しやすく、黒が吸収するからです。
黒潮はプランクトンが少ないので、魚が少なくなりますよね?
不思議なことに、黒潮は親潮と同じように魚が豊富にいます。
では、なぜ黒潮は魚が豊富なのでしょうか?
親潮の所で考えたように、普通は栄養が少ないので魚の餌も少なくなると考えられます。しかし、実際は魚が豊かに存在しています。この謎を「黒潮パラドックス」といいます。現在このことについては、研究が進んでいて、様々な要因が考えれています。
パラドックスとは … ある前提から全く考えられない結論が出ること。逆説などともいわれる。
2つの海流がぶつかる場所 潮目とはどんな所?

左の地図のように寒流の親潮と暖流の黒潮が三陸沖で合流します。これらの海流がぶつかる場所を「潮目」(しおめ)といいます。
潮目は目視でも確認することができます。
このことから、潮目は魚が集まってくる所で、漁場だということが分かります。三陸沖は世界的にも素晴らしい漁場です。
三陸沖とは、青森県・岩手県・宮城県の太平洋側の海域のことです
なぜ、潮目には魚が集まってくるのでしょうか?
- 親潮と黒潮がぶつかる潮目は、両方の海流から流れてくる魚が集まってきます。黒潮にのってかつおやまぐろ、親潮にのってさんまなどがやって来ます。潮目には様々な魚がいるのです。
- さらに、暖流と寒流がぶつかることによって、水の上下運動が起こって、深くにある栄養分が浅い所まで上がってきます。そうすると、それを餌にするプランクトンも豊富になるので、最終的にプランクトンを餌にする魚も豊富になります。
- このおかげで、三陸沖は世界有数の漁場となっています。
潮目や海流のおかげで、三陸沖の石巻(宮城県)、気仙沼(宮城県)、八戸(青森県)などの漁港は水揚げの量も多くなります。
こうして、日本の水産業は豊かになり、私たちの食生活は支えられています。
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