物質の燃焼とは
まず最初に、物が燃焼(燃える)するとはどういうことでしょうか?
身の回りで燃えやすい物を思い浮かべてみましょう。どんなものがあるでしょうか?
紙や木などを思い浮かべるかもしれません。実際これらはよく燃えます。これらの物質は「有機物」と呼ばれています。有機物とは炭素を含む複雑な化合物のことです。
有機物には炭素(C)が多く含まれているので、燃えると炭素は酸素と激しく結びついてしまい、二酸化炭素が発生します。このことを酸化といいます。その激しさゆえに光・熱が発生します。このような激しい酸化を燃焼といいます。そして、酸素と結びつけなかった残りの炭素は炭になります。それで燃えた後は、焦げた残骸になるのです。
炭素と酸素は大変相性が良いので、何かあるとすぐに結びついて二酸化炭素(CO2)になろうとします。ですから、炭素を多く含む有機物を燃やすというきっかけがあると、激しく酸化(つまり燃焼)するのです。
- 燃えるとは、酸素と結びつく反応のことです。この反応を「酸化」といい、できた化合物を「酸化物」といいます。
- 特に光や熱を出しながら激しく酸化することを「燃焼」といいます。
こうして紙や木が炎を出して燃えて、その後は燃えカスが残るのです。
では、紙や木でないもの以外について考えましょう。紙や木のような有機物以外の物質を「無機物」といいます。無機物の代表例に金属があります。無機物には炭素は含まれていません。
無機物である金属は燃焼するのでしょうか?
結論からいうと金属でも燃焼するものがあります。
ここまでで、「燃焼」についてまとめてみました。
酸素が結びつく反応を「酸化」といいます。
酸化の内、熱や光を出しながら激しく反応することを「燃焼」といいます。
有機物は燃焼しやすいです。
金属(無機物)でも燃焼するものがあります。
金属を燃やしてみる
金属が燃やそうとすると、どうなるのでしょうか?
いくつか具体例を見てみましょう。
金 属 | 化学式 | 熱と加えるとどうなるか? | 燃焼するか? |
鉄(スチールウール) | Fe | 変色する | 燃焼する |
銅 | Cu | 加熱して変色する | 燃焼しない |
マグネシウム | Mg | 変色する | 燃焼する |
鉄そのものは反応しにくいですが、小さくすると燃えやすくなります。それで、鉄のかたまりではなく、スチールウール(鉄を細かく繊維状にしたもの)の状態にすると燃焼して化学変化が起こります。それで実験ではスチールウールが使われるのです。
銅は加熱すると、化学変化が起こる。
マグネシウムは燃やすと、熱や光を出して燃焼して化学変化が起こる。
このように同じ金属類でも、熱したときの反応には違いがあるということが分かります。
3つのパターンから金属が燃焼するか考える
それでは、これから金属の3つのパターンを見てみましょう。
パターン1:鉄
前述の理由より、スチールウールを使います。それでスチールウールを燃やすと、酸化鉄という物質(酸化物)ができます。
化学変化が起きたことは、鉄の銀白色から酸化鉄の黒色に変色したことによって分かります。
鉄は酸素と結びついて酸化鉄になります。酸素と結ぶつくので質量が大きくなります。
酸化鉄にはいくつかの種類があります。ちなみに中学校では化学反応式は学習しません。なぜならいくつかのパターンがあって複雑だからです。
表し方 | 呼び方 | 化学式 | 備考 | 色 |
酸化鉄(II・III) | 四酸化三鉄(しさんかさんてつ) | Fe3O4 | 磁鉄鉱など | 黒 |
酸化鉄(III) | 酸化第二鉄(さんかだいにてつ) | Fe2O3 | 赤鉄鉱や磁赤鉄鉱など | 赤っぽい |
酸化鉄(II) | 酸化第一鉄(さんかだいいちてつ) | FeO | ウスタイトなど | 黒 |
このように、酸化鉄の化学式は複雑でいくつかのパターンがあります。
スチールウール(鉄)が、上記のどの酸化鉄になるのか状況によって変わるので、化学反応式は考えなくて大丈夫です。
パターン2:銅
銅を加熱すると、酸化銅という物質(酸化物)ができます。
化学変化が起きたことは、銅の赤色から酸化銅の黒色に変色したことによって分かります。
銅の燃やし方は、銅のかけらをガスバーナーで熱します。
銅は酸素と結びついて酸化銅になります。酸素と結ぶつくので質量が大きくなります。
それではこの反応の化学反応式を見てみましょう。
2Cu + O2 → 2CuO
銅は加熱しても、熱や光を出さないので、燃焼しません。
酸化銅の還元について知りたい場合は、次の記事をご覧ください。

パターン3:マグネシウム
マグネシウムを加熱すると、酸化マグネシウムという物質(酸化物)ができます。
化学変化が起きたことは、マグネシウムの白色から酸化マグネシウムの黒色に変色したことによって分かります。
マグネシウムの燃やし方は、マグネシウムのかけらをガスバーナーで熱します。
マグネシウムは酸素と結びついて酸化マグネシウムになります。酸素と結ぶつくので質量が大きくなります。
それではこの反応の化学反応式を見てみましょう。
2Mg + O2 → 2MgO
マグネシウムは燃やすと、熱や光を出して燃焼します。
スチールウールやマグネシウムは、熱したときに、熱や光を出して酸化(燃焼)しました。酸化銅ができるときには燃焼は起こりませんでした。
錆びる(さびる)とは
ここまでは、実験などで短時間に燃やすことを考えました。しかし金属は、ゆっくりと酸化することもあります。これはどういう意味でしょうか?
金属が非常にゆっくりと酸化することを、錆びる(さびる)といいます。金属の錆びは身近に多く見ることができます。例えば、鉄が茶色くなってボロボロになっている状態です。
なぜ錆びるのでしょうか?
それは空気中には酸素がたくさんあるからです。金属の中には酸素と相性が良いものもあります。それで、金属をそのまま置いておくと周辺の酸素とゆっくりと結びついていきます。
同じ金属でも元素の種類によって錆びやすさが異なります。今回取り上げた金属を錆びやすい順番に並べると、マグネシウム>鉄>銅 になります。ちなみに一番錆びにくい金属は「金」です。
ですから、錆びることも酸化の一種といえます。それで錆びた金属も酸化物です。
今回考えている「燃焼」と「錆びる」の意味の違いを、酸化というキーワードでまとめてみました。
光や音を出しながらの激しく酸化すること = 燃焼
ゆっくり金属が酸化すること = 錆びる
同じ酸化ですが、ずいぶん見た目の反応の仕方も違うことが分かります。
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