【歴史】いつ弥生時代の始まったか?

学習Q&A 歴史

弥生時代についての修正

今回は、令和7年度より使用が始まった帝国書院の歴史の教科書「中学生の歴史 日本の歩みと世界の動き」を取り上げて、弥生時代の始まりについてどんな動きが起きていきたのかを見てみましょう。

以下の表に変更点をまとめました。

新教科書P28約1万数千年前から紀元前4世紀ごろまでの時期を縄文時代     
旧教科書P26約1万数千年前から紀元前3世紀ごろまでの時期を縄文時代 
新教科書P29弥生時代は、紀元前4世紀ごろから紀元3世紀中ごろの約700年間  
旧教科書P27弥生時代は、紀元前3世紀ごろから紀元3世紀ごろの約600年間  
※新教科書と「令和7年(2025年)版」、旧教科書は「令和3年(2021年)版」を意味しています。

上の2つの表をまとめますと、縄文時代と弥生時代の境目が変わったということです。以前の教科書と比べてみると、弥生時代の開始がほんの少し早まったことが分かります。

では、そもそも何をもって縄文時代や弥生時代と分けているのでしょうか。主に稲作や農耕が日本列島で行われた時代を弥生時代と呼んでいます。縄文時代は狩猟・採集が中心でしたから、食料確保のための手段の違いで時代を分けていることが分かります。

しかし、どこで縄文時代と弥生時代を区分するかは、長年にわたって議論がなされてきました。以前は縄文土器や弥生土器の使用で時代を分けていましたが、ひとつの道具だけで時代を分けるのも無理があるので、生活様式の変化で時代を分けるようになりました。それでも、これらの時代を分けるのは難しいといえます。生活様式の変化はある日を境に急に起こるわけではないからです。始まった時期についても幾つもの数字が出されてきました。例えば、紀元前4世紀または紀元前3世紀といった時期です。

弥生時代に関する新説

その中で、21世紀に入って、弥生時代はもっと早く始まったとする説も出てきました。

2003年に「国立歴史民俗博物館」が発表した紀元前10世紀とする説です。弥生土器の調査の中で、その土器についていた古代米を科学的に分析すると、紀元前10世紀のものだったということから、この説が登場してきました。米作りが日本に到達している時点が弥生時代とするならば、それが時代の始まりでもいいのではないかという考え方です。そういうわけで紀元前10世紀には弥生時代は始まっていたと考えられるようになりました。

上の説を受け入れて考えてみますと、日本での稲作は紀元前10世紀頃に九州から始まって、その後東へ北へ進んでいったと考えられます。しかし日本列島はとても長細い形をしています。しかも本州・九州・四国は海で隔てられています。今のようにあっという間に情報や技術が伝わる時代ではなかったので、一気に稲作が日本列島に広まるのは難しかったでしょう。その期間は、九州から遠い場所で、約700年~800位かかったと言われています。

新説への評価

10世紀説は当初はいろいろな意見が出ましたが、現在では受け入れられつつあります。しかしまだ確定したものではないので、まだ学校の授業では、この説を主要な考えとして扱うことはできないようです。授業では補足的に扱うことになっていますが、これからの研究の成果によって扱い方が変わってくるかもしれません。

弥生時代の始まりについて、九州に稲作が伝来したのを弥生時代の始まりとするか、日本列島に広く伝わったのを弥生時代の始まりとするかで議論があると思います。しかし、このように考えてみますと、そもそも縄文時代と弥生時代を細かく区分すること自体難しいと思います。

しかし、教科書では語句として定義する以上、どこかで線を引かないといけません。さきほども紹介したように、紀元前10世紀説以外にも、もともと紀元前4世紀紀元前3世紀とする線引きが混在してきました。現在では紀元前4世紀の方が有力なので、今回の新教科書では、そちらの方に合わせて紀元前4世紀(紀元前400年)頃としたようです。

結果として、新教科書では新しい説(紀元前10世紀説)も紹介しつつ、バランスを取るような記述になっており、本文中では「紀元前4世紀」注釈部分に「紀元前10世紀」と記述されるようになりました。

このように、現在でも弥生時代の始まりに関しては、確立された見解は示されていません。

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